ロシアと中国、月面基地建設で合意、研究協力へ

2021年3月9日、中国の国家宇宙局(China National Space Administration)とロシア国営宇宙開発企業ROSCOSMOSは、「国際月面研究基地」(International Lunar Research Station)の建設に向けた覚書を締結しました。

国際月面研究基地は、月面又は月の軌道上に建設される予定で、総合的な科学研究施設として、多目的の研究作業を行うものとされます。
具体的には、月面資源の探査及び利用、月面からの観測並びにその他一般的な科学実験及び科学検証が想定されています。
さらに、国際月面研究施設に係るプロジェクトには、希望する全ての国及び機関が参加することが可能です。
実際、欧州宇宙機関(ESA)は、国際月面研究施設の建設に係る議論に参加していたと言われており、ESAの各計画に沿った利益状況によっては、今後、中国及びロシアの計画に参画する可能性は否定できないものと思われます。
なお、ESAは、NASAとの間で2020年10月27日付けで月周回軌道の宇宙ステーション(Gateway)の建設に向けた覚書を締結しています。

月面探査に係る国際的な枠組みとしては、米国を中心とする多国間合意である「アルテミス合意」が存在します。
アルテミス合意は、2020年10月13日、米国、日本をはじめ、ルクセンブルク、アラブ首長国連邦(UAE)、カナダ及びオーストラリア等の8カ国で締結され、現時点で9カ国が参加する多国間合意です。
宇宙の憲法とも呼ばれる宇宙条約(1967年発効)では、当時の科学技術において、宇宙資源の探査及び利用の問題や宇宙デブリの問題が現実的に想定されていなかったため、これらの問題に対する明確な規定を欠いています。
例えば、宇宙条約第2条では、月その他の天体を含む宇宙空間に国の主権が及ばないことが明記されていますが、宇宙空間で採掘された資源の法的な取扱い(所有権が及ぶかという問題を含みます。)については明記されていません。
また、宇宙条約第9条では、宇宙空間の有害な汚染を避ける旨の規定は存在しますが、宇宙デブリの軽減や除去に対する具体的なルールは設けられていません。
そこで、アルテミス合意では、宇宙条約などの条約を遵守することを確認する一方で、有志国の間で宇宙条約を補足する国家間合意を形成することを目的として、まずは、基本的な10原則を定めています。

今回の中国とロシアの覚書は、アルテミス合意とは異なる新たな国際的な枠組みを形成する意図があるものと推測できます。
今後、ドイツ、フランス、インドなどの宇宙先進国、そしてESAの動きを注視していく必要があるでしょう。
また、なによりも、民間企業の投資を阻害しない法的安定性及び予見可能性が担保された統一的な法的枠組みの形成が望まれます。
ロシアと中国、月面基地建設で覚書 ロードマップ作成へ | Reuters
China, Russia enter MoU on international lunar research station – SpaceNews

文責:弁護士 稲垣 航

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